WKS社の和牛の遺伝資源を用いた牛肉生産販売方式
斉一性を基本とする生産理念
 
1.牛肉生産供給のついての基本的コンセプト
当社が所有する優良遺伝資源を用いて、他の牛肉と差別化できる良質な牛肉を年間通じて大量かつ安定的に消費者に供給する。そのために肥育素牛生産から肥育および牛肉販売までを一貫して行う。
 
2.肥育素牛および肥育牛の生産と牛肉販売についてのコンセプト
@素牛生産
肥育素牛生産では、肉質および肉量の安定した牛肉生産を行うために、肉質および発育に関する遺伝的能力の高い当社の遺伝資源(精液)を用いて生産する。また、年間を通じて遺伝的能力の揃った素牛を大量に生産するために、発情同期化技術を用いて人工授精により生産する。
 
A 肥育牛生産
肥育牛生産では、一定月齢および体重の素牛を毎月肥育に導入し、一定期間肥育して出荷することにより、無駄のない安定した肉質の生産ができる。肥育では和牛が持つ優れた肉質能力を十分発揮させる肥育ノウハウを駆使する。
 
B牛肉の生産販売
生産される牛肉は、豪州の通常の和牛交雑牛から生産されるものと比べて、肉質と品質の揃いの点で差別化できるものであるので、他の牛肉と同一視される市場で流通させるのは適切ではない。したがって、ブランド化し独自の販売ルートで販売する。
 
C 各生産工程の合理化
全工程の生産合理化を図り、全体の生産性の向上を促進するためには、@、AおよびBの各工程間を通して、各工程間の情報をやり取りできることが大切である。各生産部門が別個の経営体では、この合理化が図れない。
 
3.各生産工程に関する技術的背景と豪州で行われている慣行的生産との対比
 
@ 素牛生産
 (a) 自然交配による季節繁殖の問題点
当社では肥育開始時の肥育素牛の月齢および重量条件を揃えるために、素牛生産を毎月行うが、豪州では和牛交雑素牛の生産でも春秋二回の自然交配よる季節繁殖が一般的である。季節繁殖で生産された素牛を用いて一定期間の肥育をし、これを年間通じて出荷する、とすると、肥育導入月齢を調整するか、出荷時期を調整するか、をする必要が生じ、おもに飼料の利用性や枝肉への過剰脂肪の蓄積などの無駄が生じる。また、生産される牛肉の品質の揃いが悪くなる。
自然交配のもう一つの問題点は、自然交配ではブル一頭の仔牛の生産頭数はわずかであり、従って肉質等級の揃った牛肉を大量に生産することは不可能である。
 
 (b) 産肉能力に関して斉一性の高い肥育素牛生産での必須条件
肥育素牛の産肉能力は両親の能力の平均値として現れる。オスは多くの繁殖雌牛に交配されるので、生産素牛の群全体の能力に対するオスの能力の影響は大きい。しかし肥育素牛の能力の半分は母牛由来のものなので、特に和牛交雑F2やF3の生産では、種々雑多なブルから生産された和牛交雑繁殖牛の遺伝能力の変異が大きい実態があるので、それらの産子である肥育素牛の産肉能力は変異が大きくなる。現在豪州で繁殖に用いられている和牛交雑雌牛は、基本的に自然交配で生産されたものであるために、同一の遺伝的構成をもつ牛群サイズが小さいために、これらを用いて生産されるF2、F3肥育素牛は産肉能力の斉一性が低い。
このように自然繁殖が内蔵する問題は全て、当社が採用している繁殖牛の発情同期化と同一種雄牛の精液を用いた人工授精による生産方式によって、解決できる。
 
 (c) フル・ブラッド和牛の生産と能力検定
当社はすでに日本国外では最も優れたフルブラッド和牛オスを所有しており、蓄積された精液は数十万本に達する。また数十頭のサイアーを所有し、これらからは全て精液採取をしている。これらを用いて、肥育素牛を生産し、それぞれの肥育成績をもとに本格使用するかどうかを決定している(間接検定)。また、多くのフルブラッド胚から雌牛の生産も行っており、豊富なフルブラッド牛群から優れた後継牛の生産に努めている。
 
A 肥育牛生産
当社が所有する種雄牛の産肉能力は、すでにアメリカで一万頭以上の和牛とアンガスとのF1についての肥育実績があり、その産肉成績はマーブリングおよびその他の産肉形質に関して、その斉一性が優れている事が実証されている。和牛の能力を交雑によって利用しようとする場合、和牛の産肉特性を理解する必要があり、理論を踏まえた肥育技術に関するノウハウが重要である。この点現在の豪州の肥育技術はまだまだ不十分である。和牛交雑素牛を用いて肥育しても在来英国系種と同じような枝肉の生産に終わっている原因は、主に用いる種雄牛の産肉能力が高くないことと、肥育技術が適切でないことによるものである。
 
B 牛肉の販売
和牛交雑肥育牛から生産された豪州産牛肉が、特定の地位を確保できていない原因は、他の牛肉と差別化できるほどの内容を持っていないからである。その原因は前項で述べた原因によるものである。そのため、既存の販売ルートで日本市場に流すと、和牛交雑牛の肉としての認知が得られず、有利な販売ができない。これに加えて日本ではAussie beefは肉質が良くないとの一般認識が強い。
当社では良い牛肉を生産しても、一般市場ルートでの販売では他の肉と同等に扱われる恐れがあることから、独自のブランドと販売ルートをもとに販売する。
 
4.時代的趨勢とのマッチング
消費者からの食糧の安全性に対する要請は年毎に強まる状況にある。当社では素牛生産段階から、生産過程で用いた飼料、薬剤の使用等の情報から、素牛個体の育成経歴の情報に至るまで公開できるシステムを採用している。当社が素牛生産から牛肉の販売までを通して行うことにより、全生産工程に関する情報を適切に消費者に提供できる。
先進国のアメリカや日本および現在経済的に発展している中国や東南アジア諸国でも、次第に良質な牛肉の需要が増加してきており、その需要量は膨大となりつつある。このような時期に我社の基本コンセプトとなっている一年を通して、他の牛肉と差別化できる良質牛肉を安定的に供給する体制を作りあげることは時宜にかなっていることであると確信する。